精神科医が肩肘張らずにブログを書いてみた

精神科が多くの人に関心をもってもらえますように。

スケープゴート

ブログをご無沙汰しておりました。

精神科外来の開設当初は時間がいくらでもあったのですが、有難いことにこの1年で外来数が増え、ブログを書く時間がとれない日々を送っておりました。

 

今回ブログを書いたのは、日常診察のなかで少し発信をする必要があると思ったからでした。

 

以前、学校などの集団のなかで、より健康的な人に静かに歪みが生じてしまうことがあるとをテーマとした記事を書きました。

「鈴木先生」 ~集団の中で「問題のない人」に起きていく歪み(ひずみ)~

 

今回は精神科の外来でよく見かけるケースです。

精神科を外来受診される人は、概ね精神症状やそれに伴う行動が問題となって受診をされるのですが、実はその原因を考えていくと、本人だけの問題ではなく家族として抱えている大きな問題がある場合があります。

 

ところが家族全体としてみると、その患者さんだけが症状を出しているので、他の家族は問題意識を持っていない、むしろ患者さんに「困っている」という訴えになります。

 

このように、家族の個々のメンバーが抱える問題であったり、メンバー同士の関係性によって起こっている問題があっても、それらの歪みが集中した人だけが精神症状や目立った行動を起こす場合があり、この人のことを「スケープゴート」と呼んでいます。

 

これらに気づくにはちょっとコツがあるのですが、そこは診察技法になるので割愛させていただきます。

 

さて、問題は治療者としてそれに気づいた場合にどうするのか。

患者さん本人が自力で家族のパワーバランスを変えられそうな力がありそうな場合には、本人にフィードバックとサポートをしながら、少しずつ行動を変化させていってもらいます。

それが難しい場合には、ご家族にも参加をしてもらう「家族療法」という治療法が選択肢の一つとしてあります。一般外来のなかでも家族関係は扱いますが、本格的に継続をして家族内の関係性について扱いパワーバランスに変化を起こさせていく場合には、専門家が家族療法を行ったほうが安全に効果を得られやすくなります。

(ただし、家族療法の専門家は少ないのも実情です…)

 

さて、ここで患者さん一人の問題とされていたものが、家族として受け止め考えていく形に変化をしていくのですが、この時に大変なのは家族さんです。大抵の場合は「寝耳に水」なので、ご家族に反応が出ます。治療の過程ではご家族さんが不調となる場合も多いし、なかには激しい怒りが生じる方もいます。だからこそ、専門家が入りバランスをとりながら治療をしていくことが望ましいのです。

 

 痛みも伴う治療ですが、その治療の先に新しいバランスの位置がみつかり、より家族関係が深まったものになればいいな…と治療を依頼するときには思っています。

 

今回は、ちょっと重めな話でした。

 

他の記事は精神科領域と文化のお話など、もう少し読みやすいものも多いので、もしよかったら覗いてみてください。

 

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 *診療所のHPからブログを見ていただいた方へ*

 現在、当院では精神科のスタッフが医師1名のみのため、カウンセリングが有効であると考えご提案をする場合、他医療機関、カウンセリングルームへの紹介を行う形をとっております。その際は、(紹介先の仕組みにもよりますが)治療全体の方針決めや薬物療法などは当院にて継続し、カウンセリングのみを外部にて実施する場合が多いです。

 患者様にはご不便をおかけいたしますが、何卒ご理解をお願いいたします。