精神科医が肩肘張らずにブログを書いてみた

精神科が多くの人に関心をもってもらえますように。

患者さんの意向に沿えないとき ~医原性薬剤依存症の問題~

久々の記事ですm(__)m

今回はサブカル話ではなく、日常診療でのお話。

 

精神科医をしていると、精神療法などの専門治療をしていたり、きちんと治療をしていなかったりする場合を除き、基本的には日常診療のどこかで薬物療法を行います。

 

いろいろな考えの医師がいると思いますが、私が薬物療法で大切にしていることの一つに「医原性(医療によって起きる)薬剤依存症を防ぐ、治す」ということがあります。

 

 

過去にはメチルフェニデートという薬のうつ病への治療が問題となりましたが、いま出会うのは、主に睡眠薬抗不安剤の問題です。

 

ベンゾジアゼピンと言われる薬剤を中心とした睡眠薬抗不安薬は、長期に使用を続けると耐性(お薬が効きにくくなる)、依存の問題を生じやすくなります。

ところが、これらの薬は効果をすばやく実感しやすいので、患者さんから増量や強い薬の処方を求められることも多いのです。ところが、この求めに乗り続けると

「増強→一時的な症状改善→耐性による効果減弱→症状悪化→増強…」という依存症の悪循環に入ってしまうのです。さらに、耐性が強まると薬剤を減量するときに不調が目立ちやすくなります。

 

そのため、私の診察では医原性の薬剤依存症を起こさない、重症化させないことを重要視しています。実際には、依存性のない睡眠改善効果のある薬、即効性はなくても依存性のない抗不安効果がある薬などが存在するので、たとえ切れ味が悪くても、中長期的な戦略で治療を考えていくことができます。

 

ぶっちゃけ、その場のニーズを満たすだけなら、そんな面倒なことをする必要もないし、実際に望む薬をすぐに出してくれる医師を好む患者さんも一定層います。

それでも、長い年月でみたら正しい治療をしていくことに意味はあるのかな…というのが私のポリシーなのです。

 

*ちなみに、正しく使えば効果を出しながら依存耐性もある程度のコントロールはできると考えており、ベンゾジアゼピン系薬剤も処方しないわけではありません。

 

ちょっと頑固…とも言えますが、中長期的な患者さんの治療もイメージして、その場でいい顔をしすぎない医療をしていきたいなと思っています。