まとまった時間ができたので、ブログを…と開いたら、前回が1月でびっくりしています。ということで、久しぶりの更新です。
新天地のクリニックに就任し、早いもので1年が経ちました。
そのときの記事がこちら。
このとき触れた「とある漫画」から精神科医を目指したエピソードについて、1年という区切りに書こうと思います。
ここは私設ブログなのですが、多少なり自己開示の意味合いを持ってしまうので、どう書くか、いつ書くか悩んでおりました。でも、そろそろいい時期かな(笑)ということで。
「MIND ASSASIN」
1994-95年の作品だったんですね、時の流れを感じます…当時、週刊少年ジャンプに連載をされていた作品です。しかし、記憶に残っている人は少ないかと思います。
この漫画は、記憶と精神を破壊する能力を持った医師が主人公のお話。心の描写がとても丁寧に扱われており、この能力を使うことの、主人公の葛藤も描かれています。
サスペンス系なのですが、その事件の内容や心的描写の生々しさゆえ、少年ジャンプの読者層には重かったのかもしれません。私は床屋かどこかで偶然読んだジャンプから興味をもち、そこから単行本で読んでいきました。
この漫画を通して考えさせられたことは、記憶は消せるのか、書き換えられるのか。それにより、人生はどのような変化が起こりうるのか。
そのことに強い興味を覚えた私は、様々な角度からこのことを調べていきました。
当時は想像力も豊かだったので、フロッピーディスク(←時代!)の差し替えみたいに記憶の出し入れができないか?なども考え、試験勉強をしなくていい時代が来るかも!など夢も抱き、人工知能などについても関心を持ちました。
しかし、少年の心をもった私も「記憶は簡単に消したり足したりできない」と知り、生きている間に達成するのは難しそうだなぁと…そして実際に、脳科学、人工知能を扱う医学部以外の学部も調べて悩む…というところまでいくのですが、最終的に医学部へ進学をすることとしました。
でも、医学部入試の面接で「脳、記憶の研究がしたい」と話したのは覚えていますし、大学時代から研究機関での学生向けサマーキャンプなどにも参加をしておりました。
そして、記憶、脳への関心はその後も続き、様々な過去の記憶に悩む人たちと一番関わりが深い精神科へ。
そのなかでたどり着いたのが「精神分析」という分野で、記憶そのものは変えることができなくても、そこに伴う感情は治療により変化しうるし、ときには記憶そのものが現実に起こったこととは違った、という結論に達する事があることも知りました。
古い記憶にも携わる治療者になるにあたり、その人の過去への呪縛が和らぎ、先の人生を歩みやすくなるためのサポートをすることが、一つの役割なのかなと思っています。
一方で、思い出すことさえ危険だからこそ記憶に出てこないケース、また「辛い事と幸せなことは共存していた」ということが激しい葛藤を引き起こすケースも多くみられ、精神分析的なアプローチは万能ではないとも感じています。
今の段階で私がたどりついたところは、
「過去を理解していく、振り返らず進む、など治療的アプローチの選択肢は様々だけれど、患者さんが生きやすくなればいいのかな?」 です。
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最初に「自己開示の意味合いを持ってしまう」と書いたのは「こんなことに興味持つ時点で、過去に何かあったでしょ?」と感じる読者が出るだろうな、ということです。そして、そのことは否定はしないです。
自分自身が心の治療者を目指すにあたり、過去を含めた自分と向き合う時間もつくったのですが、それは苦しい面もあったけれど大切な財産になったなぁと感じています。
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ということで、ジャンプの電子版をリンクしておきます。ご興味のある方はぜひ。
(第1話は無料で試し読みができました。久々にあの頃を思い出してます。)