精神科医が肩肘張らずにブログを書いてみた

精神科が多くの人に関心をもってもらえますように。

社交不安障害(社会不安障害)のお話

社交不安障害(社会不安障害)って病気をご存知でしょうか?

 

実は、いつもお世話になっている方が、長年これで苦しんでいたようで、しかし病気とは全く思っていなかったとの話を聴いたので、これを書きました。

 

多くの人が、人前の発表などでは緊張をすることはあるわけですが、たとえば普通の人が何とかなる場面でも「頭が真っ白になってしまう」「動機などで普通にはいられない」という自分でどうにもコントロールのできない症状がでてしまう、

簡単にいうと、こんなイメージです。

 

読んでいただいた方の中で「え?自分そうなんだけど」という人が出てくると思います。そう、この病気はありふれたもので、一生のうちにこの病気になる可能性は1割を超えるとも言われています。

 

ところが、よほどの重症でない限り、みんな病気と思っていないんですよね。

 

性格的な要素が大きいと思われるケースも確かにありますが、「脳の不安に対する制御不良」が絡んでいると感じられることも多いです。

 

実際、セロトニンという脳内の不安をやわらげる物質を増やすタイプのお薬が、偽薬(プラセボ)との比較で明らかに有効とされています。

 

治療の実際としては、困る場面と頻度により方法を考えます。

まずは、不安となる場面の心理的なコントロール

専門的には認知行動療法というシステマティックなやり方がありますし、そうでなくてもこの考えを踏襲して日常診療を行っていくことで、ほぼ有効性があると考えます。

 

必要に応じて薬物療法の併用も行っていきます。

 

場面が限局し、かつさほど困らない場合は、その場だけの症状をやわらげる薬。

一般的に言う安定剤や、心拍数を上がらないようにする自律神経系の薬を使う場合がありますが、特に安定剤を1日何回も長期に使用をすることについては依存、耐性(お薬がだんだん効かなくなり量が増えてしまう)などのデメリットもあります。

 

なので、緊張する場面が多く、日常全般への影響が強い場合は、前述したセロトニンという物質を増やす薬剤を使い、脳をコントロールしている伝達物質そのもののバランスそを調整する方が望ましい・・・というのが、大まかな考え方となります。

 

きれいさっぱりよくなる・・・とまではいかなくても、専門治療を受けることで、多くの人が症状が軽くなることは多い病気、と考えています。

 

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最後に。

 

この病気は頻度の高いものなのに、なぜ知られていないのか・・・という問題。

それは、直接的に命に関わるものではないため、国などもあまり啓蒙活動をしていないんですよね。

そして、こういうのは自分の気持ちの弱さだから…と考える、文化的な背景もあるのではと考えています。

 

でも、この病気は思春期には発症していることが多く、受験や面接など、またはそもそもの職業選択などにも影響をしている人がたくさんいるのでは、と思うのです。

 

ということで、もしこの記事を読んで、身近にこういう人がいましたら、こんな話もあったなぁと思いだしてもらえたらうれしいです。 

そして、公ではない私のような立場で、こういう病気の存在について知ってもらうための活動ってどうしたらよいのだろう・・・というのは、いつも悩んでいるところです。

 

執筆活動しても、売れないと広まらないしなぁ…