桜の季節。(このあたりが満開のときに記事を書きはじめたのですがギリギリ!!)
桜をみるとワクワクしてお花見をしたくなる気持ち。「当たり前」と思っていたのですが、この感情は生きていく中で得るものなのかな…と気づかされる出来事がありました。
出来事そのものはプライバシーの関係で割愛いたしますが、このときに思い出したのが「誰も知らない」という映画。2004年公開の是枝監督の作品で、主演の柳楽優弥さんが当時14歳でカンヌ国際映画祭の最優秀主演男優賞を受賞されたことでも話題となりました。
ネグレクト(育児放棄)の実話を題材としたこの映画。
外界と遮断された世界、当たり前のことが当たり前でない世界で成長した場合、心はどのように発達していくのか…
私はあの子どもたちの表情を撮った監督は「辛い、悲しい現実であるということすら、うまく実感できていない日常」を表現したかったのではないだろうかと感じていました。そして、見る側がどこまで意識化できるかはさておき、無意識レベルでも何かを感じ取るので、作品の中にいる子どもたちと自分との感情の乖離が、この作品のもつ特異性になったのだと思っています。
子どもたちの表情は、ラストシーンまでとても印象的に…、10年以上経ってもなお忘れられないほど強烈に脳裏に焼き付いています。
そして、精神科医を長くやっていると、このようなケースと向き合うこともあるのですが、その際、本人がその不幸であろう(と一般的には感じるだろう)生い立ち、出来事をどう捉えているのか、ということを大切にしています。
そして、この患者の感じ方は治療の経過とともに変わり、その過程で辛さや悲しみが強まることもある、ということも治療者として忘れてはいけないことなのです。
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お花見をして、ワクワクして美しいなって思ったとき、自分をそういう風に育ててくれた親など身近な人たちに、小さな感謝の気持ちを抱いた2018年春でした。
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